◆異種間で伝えるために [評]片野ゆか(ノンフィクション作家) 人間が犬と共に暮らして一万五千年以上。家畜化された理由は諸説あるが、ヒトが未開を脱し文明に至る過程で、防衛や狩猟、牧畜の効率化に貢献した可能性を否定する者はおそらくいないだろう。だが言葉(主に音声言語)の起源と発達は、犬の存在なしになかったと聞いたら、皆さんはどう思われるだろうか。 言葉を発することができない犬が、いったいどうやって人間の言語発達に寄与したというのか?
(講談社選書メチエ・1890円) 生存支え合った歴史をひもとく 人間と犬の関係を人類史の中に位置づける本である。 今、我々にとって犬はペットでしかない。飼うという一方的な視点からのみ犬を見ている。 しかし、かつて犬と人間は互いの生存を支え合うパートナーだった。犬との絆によって人間は寒冷期を生き延びて生息域を広げ、野生の羊の群れを家畜化し、なによりも言語を作った。 「イヌのおかげでヒトは人間になった」というさる作家の言葉がはじめの方に引用されている。いかになんでも話が大きすぎると思うのだが、それが次々に立証されてゆく。まさに知的な快感。
ふと、そんな風に考えた。 すでに見送った愛犬達が恋しくなった。
ホーム > 和書 > 新書・選書 > 選書・双書 > 講談社メチエ 出版社内容情報 人間は自分たちだけで文明への階梯を上がって来たのではない。 一万五〇〇〇年前、東南アジアいずれかの川辺での犬との共生。 ニッチを見出す途上にあったお互いの視線の重なりが、 弱点を補完し合い、交流を促し、文明と心の誕生を準備した。 オオカミは人間を振り返らないが、犬は振り返る。 人間は幻想や感情で判断するが、犬は論理的に判断する。 犬は人の言葉を理解し、人の心を読み、人の窮地を救う―― 人間と犬、運命共同体としての関係の特異性と起源を探る。 内容説明 人間は自分たちだけで文明への階梯を上がって来たのではない。一万五〇〇〇年前、東南アジアの川辺での犬との共生の始まり。ニッチを見出す途上にあったお互いの視線の重なりが、弱点を補完し合い、交流を促し、文明と心の誕生を準備した。オオカミは人間を振りかえらないが、犬は振りかえる。人間は幻想や感情で判断するが、犬は論理的に判断する。犬は人の言葉を理解し、人の心を読み、人の窮地を救う―。人間と犬、運命共同体としての関係の特異性と起源を探る。 目次 序章 イノシシ猟の衝撃―二〇一一年二月二三日 第1章 犬への進化 第2章 イヌ、ヒトに会う 第3章 犬の力 第4章 「ことば」はどのように生まれたか 第5章 こんなことが信じられるか? 著者等紹介 島泰三 [シマタイゾウ] 1946年生まれ。東京大学理学部人類学教室卒業。日本野生生物研究センター主任研究員、ニホンザルの生息地保護管理調査団主任調査員などを経て、現在、日本アイアイ・ファンド代表。理学博士。アイアイの保護活動への貢献によりマダガスカル国第五等勲位「シュバリエ」を受ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) ※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
2019. 9. 6 7:08 片岡義博 本当だとしたら世界観がゴトンと90度くらい変わりそうだ。私たち人間が心を持ち、言葉を話し、文明を築いたのは遠い昔、犬に出会ったおかげ、というのだから。そんな最新の学説を軸に動物学者が人間と犬との運... 名前 :片岡義博 プロフィール:かたおか・よしひろ 1962年生まれ。山口県出身。共同通信記者を経て2007年フリーに。記者時代は演劇、論壇などを担当。09年末から本欄担当に。東京都小平市在住。